日本を代表する書家・相田みつをさん。チャラく言えば、名言クリエイターとでも言いましょうか(笑)
相田みつをさんといえば、
「つまづいたっていいじゃないか 人間だもの」
という「詩」が代名詞ではないかと思います。
数々の名言を残し、有名な詩はいくつもあります。とても深みのある詩ですが、コロナ禍で混迷する今、また注目を浴びているそうです。
もちろん、その言葉は心を揺さぶるものではありますが、「相田みつをさんが言うから」という意味合いが強いのではないかと思います。
まずは、相田みつをさんがどういう人か、ということについて知っていきたいと思います。みつをさんの背景を知り、詩の重みを感じていきましょう。
相田みつをさんという人
今でこそ、相田みつをさんの名前や、「人間だもの」の詩など、ご存知の方が多いと思います。
その名が知れ渡ったのは、美空ひばりさんが自伝にも記したことがきっかけだそうです。病の中にあった時、みつをさんの詩に支えられたんだそうです。
美空ひばりさんがきっかけで認知度が広がっていき、一躍有名になったのは、1984年に出版した『人間だもの』。ベストセラーとなり、後にミリオンセラーになるほどでした。
しかし、みつをさんが亡くなったのは1991年で、享年67歳。つまり、みつをさんが広く認知されたのは晩年だったのです。
実は、長い間あまり売れることがなく、むしろ貧しい日々を過ごしていたのです。
貧しくても、仕事に妥協は許さない
そんな貧しかった時のエピソードが色々あります。書が売れず、お米も買えず、奥様が「働きに出ます」と相談したことがあったそうです。奥様が働きに出れば、少しは楽になります。しかし、みつをさんはこう答えました。
「私は弱い人間です。書以外でお金を稼げることを知ったら、怠けてしまう。だから、働きには出ないでくれ」
みつをさんの言う通り、奥様は働きに出ることなく、貧しい日が続きました。仕事に対して、プロ意識が高過ぎる、と言えば格好いいですが、不器用な人でもあったのでしょうね。「書」が売れるまでは、培った染物の技術で、包装紙などをデザインして生計を立てていたそうです。その時にデザインしたものが、今でも使用されているものも多くあります。
また、みつをさんは「書」へのこだわりが強く、「本番で力を発揮する為」と、練習用の紙も、清書に使用する高級紙を使用していた為、かなりの経費がかかっていたそうです。しかも、自分が納得するまで同じ詩を100枚以上書くこともあったそうな。
にも関わらず、納得のいかない作品を人に見せることを嫌い、せっかく売れた自分の「書」も、本人とは告げず、なけなしのお金で買い戻して、破棄していました。なので、息子さんには、自分が亡くなった時、若い頃の作品を買い戻して欲しいと伝えていたそうです。
奥様への想い
このように、貧しい中でもプライドを持って仕事をし、一切の妥協をしませんでした。それが故に、長い間苦労したそうです。みつをさんが亡くなる前、そんな自分に、文句も言わずについてきてくれた奥様に、
「生まれ変わっても、もう一度夫婦になろう」
と言い残したそうです。「ただいるだけで」という詩は、奥様に書いたものだと言われています。ただ、奥様は苦笑いしたそうな(笑)
お金の為に「詩」を書いていかなかったからこそ、苦労は長かったものの、相田みつをさんの言葉には、重みが加わったのだと思います。だって、稼ぐ為だけに書いていたら、商業っぽくなってしまうし、伝わるものも伝わらないですよね(^^;
売れることやお金に捉われるのではなく、自分が納得のいく作品を作る為に妥協しない。最高の未来にするのではなく、最高の今にする。そんな相田みつをさんの生き方そのものが、まさに道楽家のようです。
名言から感じる「道楽」
そんな相田みつをさんを代表する言葉がもう一つ。
「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」
コラムのタイトルにもなっているこの詩は、コロナ禍において、必要な言葉だと言われています。感染が始まった当初、「マスクの高額転売」が問題となりました。冬になれば、毎年インフルエンザ対策として、マスクが必要となります。そんな時期に、新型コロナが流行り、マスク着用が必須となる事態になりました。そんな時に、悪質転売ヤーによって、マスクが高額で転売されたことで、取り締まる事態にもなりました。その後も、必要とされる消毒液や除菌シート、ニンテンドーSWITCHなど、必需品の転売や買占めが後を絶ちませんでした。
マスク不足により、「アベノマスク」という、460億円もかけてたった2枚のマスクが配られたりしましたが、届いた頃にはマスクも市場に出回りました。とはいえ、値段はまだ高いですが・・・
こういった非常時に起こる転売や買い占めは、欲や恐怖によるものです。目先の利益や過度な不安によって、正常な行動が取れなくなるものです。『HUNTER×HUNTER』でも、蟻の王メルエムは、「人の呼吸を乱すのは、欲望と恐怖」と言っています。
出典:HUNTER×HUNTER/冨樫義博 集英社
「欲は目を濁らせ、畏は足を竦ませる」と言います。マスク不足や転売問題も、欲望や恐怖を煽られたり、捉われてしまうから起こり、奪い合って足りなくなるということです。
「与える」ことで生まれる上下関係
そして、特に道楽的だなぁと思うのは、「分け合う」という所です。ポイントは、「与える」のではなく「分け合う」という表現です。
「与える」とは、自分が持っているものを相手に渡すことを意味します。言い換えれば、持つ者が持たざる者に渡すことのことを言います。言い方によるのかもしれませんが、「与える」とはどこか上からの物言いで、おこがましさを感じます。
もちろん、「与える」ことは素晴らしいことだとは思います。最近の流行りで言えば、「与える」ことで、相手よりも上に立ち、マウントを取りたいのかもしれません。
つまり、「与える」とは上下関係を作る行為だと言えます。
分け合うことで「シェア」する
「与える」とは、人の為だと思われがちですが、突き詰めれば「自分がしたい」という自己満足の行為でもあります。それを決して悪く言うつもりはありません。
相田みつをさんもそう思ってなのか、「与え合う」のではなく「分け合う」と表現しました。「分け合う」ということは、上下関係ではなく、言うなれば「共有関係」です。
道楽舎の英語名は「Do Luck Share」と言います。道楽舎において「シェア=共有」というものは、大事にしている考え方です。上下関係を作るのではなく、お互いの価値を認め合い、尊敬し合う「共有関係」こそ、大事にしています。
そして、誰とでも共有関係になればいい訳でもありません。その為には、「信用」が必要になります。
コロナは、「人と人を引き離すウイルス」だと言われたりしていますが、人間同士の「信用」が問われているのかもしれませんね。
もしかしたら、『ウルトラマンセブン』に出てきたメトロン星人の仕業だったりして(笑)
"説明しよう!
メトロン星人とは、人間同士の信頼感を無くし、
互いに敵視し傷つけあい、自滅させようとした宇宙怪人である!"
相田みつをさんは、長く不遇の時期がありましたが、30年以上も時代を先取っていたので、理解されなかった部分もあったのかもしれません。コロナによって、再注目されていますが、コロナ関係なく、みつをさんの詩に「道楽」を感じています。
道楽舎としては、「道楽家・相田みつを」として、残していきたいと思います。
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